仙台高等裁判所 昭和43年(ラ)52号 決定 1968年8月21日
抗告人 住宅金融公庫
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。
よつて、本件抗告の適否について判断するに、破産手続に関する裁判に対し、利害関係を有する者は、他に別段の規定がない限り、即時抗告をなし得ることとなつている(破産法第一一二条)から、強制和議の認可決定に対しても、利害関係を有する者は即時抗告をなし得ること明らかであるが、強制和議の認可決定に対し即時抗告をなし得るのは、破産債権者、破産者、和議保証人、担保提供者のように強制和議の効力を受ける者に限られ、別除権者のように強制和議の効力を受けない者は即時抗告をなし得ないと解すべきである。
蓋し、強制和議は個々の破産債権者と破産者、和議保証人、或は担保提供者との間に和議条件どおりの内容の契約が成立したと同一の法律効果を生じさせるものであつて、強制和議の効力を受けるのは右の破産者、破産債権者等に限られ、別除権、取戻権等は何ら強制和議の影響を受けるものではないから、右の強制和議の効力を受ける者は、強制和議の認可決定に対して利害関係を有しその取消を求める利益を有するのであるが、別除権者のように強制和議の効力を受けない者は、何らその権利を侵害される筈はなく、右認可決定の取消を求める利益を有しないからである。
本件についてこれをみるに、記録によれば、抗告人は別除権者(現在の残元本は金八一五、〇四一円)であつて、本件強制和議の効力を受ける者ではないことが明らかであるから、抗告人は本件強制和議の認可決定に対して即時抗告を申立てる権利を有しないものといわねばならない。
よつて、本件抗告は不適法としてこれを却下し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 村上武 松本晃平 伊藤和男)
別紙
抗告の趣旨
原決定を取消す。
本件につき昭和四十三年六月二十五日の債権者集会において可決した強制和議は認可しない。
抗告費用は相手方の負担とする。
との御決定を求める。
抗告の理由
一、強制和議認可決定書「強制和議の条件」三項によれば、添付目録(二)<省略>の建物に対し、分割支払金の担保として第一順位債権極度額金五〇〇万円の(根)抵当権に次いで第二順位の抵当権を設定することを定めている。
二、しかしながら右建物に対しては既に仙台法務局昭和三八年一〇月一七日受付第三五九七六号を以て同月一六日金銭貸借を原因とし債権額金三六一万円抵当権者抗告人なる第一順位の抵当権設定がなされており、本件決定の前記条件は第二順位以下として、訂正されるべきものである。
三、よつて、本件決定を不服とし、この抗告をする次第である。